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最高裁判所第二小法廷 昭和27年(あ)3926号 決定 1954年2月27日

主文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

弁護人八田三郎の上告趣意第一点について

所論は原審で控訴趣意として主張せず従って原判決の判断していない事項であるのみならず、第一審判決は自白の外に被告人の自白の真実性を裏付け得る補強証拠を援用しているのであるから所論違憲の主張はその前提を欠くものである。

同第二点について

所論は原審で控訴趣意として主張せず従って原判決の判断していない事項であり、また法令違反の主張であるから刑訴四〇五条の事由に当らない。本件において第一審判決の確定した事実によると被告人は政府の免許を受けないで第一、昭和二六年五月頃被告人方において麦、米麹、水を原料として仕込みを為し焼酎一斗二升四合を製造し、第二、同日頃同所において前同様の原料方法で製造した焼酎(第一の焼酎と一緒に製造したもの)約一斗二升五合に黄色粉と砂糖若干を投入しこれを混和して合成清酒約一斗二升五合を製造したものであるというのであって右第一の焼酎と第二の合成清酒の原料となった焼酎とが一回の仕込によって製造されたものであることは明らかであるが、被告人が合成清酒を製造する意思でその前提として先ず焼酎を造ったという事実は第一審判決の認定していないところであり記録上もこれを認める資料はない。従って本件の如く一回の仕込によって焼酎を製造した場合でもその焼酎の一部を原料として更らに合成清酒を製造したような場合には焼酎製造行為の外に合成清酒製造行為も存するのであるから二罪が成立するとみるのが相当である。それゆえ第一審判決には所論の如き違法は存しない。

同第三点について

所論は量刑不当の主張で上告適法の理由とならない。

よって刑訴四一四条、三八六条一項三号、一八一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田七郎 裁判官 谷村唯一郎)

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